こんにちは、Akiです。
建築好き通訳ガイドの視点から、建物の魅力について紹介しています。
横浜の建築集中地帯のひとつ、横浜日本大通りの周辺にある建築を巡る記事、第6回目です。
ちなみに、私は有名建築を案内するガイドとして、地元横浜の近代建築を巡る「横浜近代建築ツアー」を独自に企画・催行しております。
ご興味ある方はこちらをご参照ください。
前回ご紹介した旧日本綿花横浜支店ビル(THE BAYS)から、日本大通りを海側に向かって歩きます。
このあたりは、少し坂道になっているのが建物の基礎の部分から見てとることができます。これは現在ではわかりくいのですが、横浜の名前の由来といわれる横に伸びた浜の部分に向かって、土地が少しずつ高くなっているためです。
幕末に描かれた浮世絵(下図)と見比べてみると、当時の地形の名残りが感じられて興味深いですね。
歩道を1~2分ほど歩くと今回ご紹介する建物、「旧横浜三井物産1・2号ビル(KN日本大通りビル)」に到着します。
旧横浜三井物産1・2号ビル(KN日本大通りビル)
この建物、一見なんの変哲もない普通のビルに見えるかもしれませんが、実は左側の1号ビルは日本大通り沿いの建物の中では最も古く、1911年(明治44年)に竣工した、日本で初めて鉄筋コンクリートを採用したオフィスビルなのです。
昭和戦後の建築といっても通じるくらいモダンで、とても明治の建物には見えませんね。
設計は日本の鉄筋コンクリート建築の先駆者・遠藤於菟(えんどうおと、1866~1943年)。遠藤は明治の有名な建築家・妻木頼黄(つまきよりなか)のもとで、横浜正金銀行本店(現神奈川県立歴史博物館)の建設に携わったのち、横浜で多くの建物を手がけました。
遠藤は、アール・ヌーヴォーなどの装飾性ある意匠を得意とし、彼が手がけた横浜銀行集会所(明治38年竣工、関東大震災で倒壊)のほか、鉄筋コンクリートに赤レンガを組み合わせた、旧生糸検査所の建物(一部復元)からは、そのデザイン力の高さがうかがえます。
さて、この旧横浜三井物産ビルの外観は、屋階の軒飾りに少し装飾的な要素が見られますが、全体的には平滑でシンプルなデザインです。
右側の2号ビルは同じく遠藤のデザインにより、1927年(昭和2年)に増築されたものですが、まるで最初からひとつの建物だったかのように見えます。
増築時に2つのビルの間にあたらしい玄関が設けられました。
この左右のビル、よく見ると壁面の窓の縦方向の分割が、左の1号館は4分割、右の2号館は3分割となっていて、ビルの表情に少し奥ゆきの違いが感じられます。
建物の中に入ってみると、アール・デコ風の内装デザインが随所に施されていて目を引きます。
内部は関東大震災で焼失し、のちに復旧されたもので、オリジナルではありませんが、昭和初期の雰囲気を持つ美しいデザインです。
※オフィスエリアには立ち入れないので、訪れる際はご注意ください。
このビルは今でも現役のビルとして、オフィスやギャラリーなどに使われているのがすばらしいと思います。
ちょっと寄り道:gooz いちょう並木通り店
建築ではありませんが、日本大通りのまち歩きで紹介しておきたいお店が、お洒落なコンビニ「gooz(グーツ) いちょう並木通り店」です。
今回ご紹介した旧横浜三井物産2号ビルの、お隣の建物の1Fにあり、緑色のサインが目印です。
普通のコンビニとは一線を画し、種類豊富な淹れたてコーヒーや、クラフトビール、店内で調理したお惣菜など、個性的なドリンクやフードが販売されています。
それらを購入してお店の前に置かれた椅子に座り、日本大通りを眺めながら一息入れるのもおすすめです。