こんにちは、Akiです。
建築好き通訳ガイドの視点から、建物の魅力について紹介しています。
先月リニューアルオープンした、国立西洋美術館に行ってきましたので、その様子についてまとめました。
私にとって国立西洋美術館は、建築ガイドをはじめた、思い入れのある建築です。
今回実施された一年半におよぶ修復工事では、近代建築の巨匠ル・コルビュジエの構想に基づいた、1959年開館当時の前庭の姿に復原するというものだったので、再開を心待ちにしていました。
国立西洋美術館は、ル・コルビュジエが設計した建築作品群の一つとして、建物だけではなく、前庭も含めて世界遺産に登録されているものです。
では早速、以前の写真と比べながら、見ていきましょう。
前庭と外観
JR上野駅公園口から上野公園に入ると右手に国立西洋美術館(以下、西洋美術館)が見えてきます。
上の写真にある右手前のコンクリート壁は、本館の立面を黄金比で分割する点に向かい、配置の基準を示すものです。
床のアミダくじ状の黒い目地は、ル・コルビュジエが提唱した建築設計の寸法体系である、モデュロール寸法に基づいています。手前の階段部分にまで黒い目地が伸びているのが見えます。
今回のリニューアル工事では、地下の企画展示室の空調・防水工事がなされたとのことで、地下天井部分の防水工事と同時に、前庭の床も一新されました。
本館建物に向かう太い目地は、前庭敷地を黄金比で分割する位置に敷かれています。そして左から右にかけての太い目地は、敷地西側の門から敷地端に設置された、ロダン作の彫刻「地獄の門」に向かいます。
現在の「地獄の門」の位置は、開館当時とは少し変わっているようで、この太い線に正中はしていません。
彫刻のような美しい外階段も、きれいになりました。
前庭の植栽もなくなり、広々とすっきりしました。ロダンの「考える人」などの彫刻も、開館当初の位置に限りなく近く配置されています。
本館内部
では次に本館内部を見て行きましょう。
本館の入り口自動ドア付近は、以前は企画展時などに売店が置かれることが多かったのですが、現在は何もなく、すっきりとして外部空間との一体感があります。
開館当時、この部分は外部空間だったので、当時の姿に近いと言えるのではないでしょうか。
また、建物の両端が反りあがり、これが吊り屋根の構造になっています。両端からワイヤーが張られ、そしてなんと、19世紀ホールまでは無料で入場できるようになっています。外部からの動線がスムーズにつながりました。
常設展示室自体は特に変わったところがないようでしたが、作品の展示方法には、配置を含めた見せ方や説明パネルを新設するなどの変化がありました。
個人的に今回のリニューアルは、ル・コルビュジエが構想した開館当時の姿を見て感じることができ、とても好感が持てるものでした。
国立西洋美術館が再開館したことで、上野公園を訪れる機会が増えそうな予感です。