こんにちは、Akiです。
建築好き通訳ガイドの視点から、建物の魅力について紹介しています。
今回は沖縄の建築について、その特徴をまとめてみました。
私が初めて沖縄を訪れたのが1985年。以来、沖縄が持つ独特の雰囲気に魅了され、毎年のように通っています。
(現在はコロナ禍のため控えております)
その中で私が見て感じた、沖縄(本島)の建築について、話をしてみたいと思います。
沖縄の建築を特徴づける要因には、地理や気候、歴史、文化があります。
どのような影響があるのか、具体的に見てみましょう。
屋根
沖縄は日本列島の南西端に位置し、亜熱帯性の気候で日差しが強く照りつけます。雨の降り方は激しく、湿度も高く蒸し暑くなります。
そのため、昔ながらの伝統的な家屋には、「雨端(アマハジ)」と呼ばれる屋根の庇を大きく張り出し、強い日差しと雨を避ける空間が見られます。
大きな庇は、木を自然の形のまま使う「雨端柱」と呼ばれる柱で支えられ、屋内は開放的で風通しのよいつくりになっています。
沖縄の伝統的な民家は玄関を持たず、この内部と外部が適度にあいまいな空間が、人々の交流の場になるようです。
沖縄の気候について、もう一つ考慮すべきは台風です。沖縄は強い台風に見舞われることが多いため、強風に吹き飛ばされない工夫が必要になります。
その対策例を、沖縄特有の赤瓦屋根に見ることができます。赤瓦は台風で飛ばされないように、漆喰でしっかりと固められています。
沖縄にコンクリートの建物が多い、というのも台風の影響が大きいようです。
材料:石
沖縄にはかつてサンゴ礁だった地層があり、サンゴ由来の石灰岩が豊富です。特に沖縄本島中南部に産する「琉球石灰岩」と呼ばれる石は、加工がしやすいこともあり、古くから建築や道路の資材として使われています。
沖縄には本土とは少し異なる形式の城、「グスク」と呼ばれる城郭があります。14~15世紀頃に築かれた大型のグスクの石垣は、石灰岩を積み上げて美しい曲線やアーチがつくられています。
首里城近くにある、有名な金城町の石畳道も琉球石灰岩を使用したものです。
琉球石灰岩は、その独特の風合いが好まれ、沖縄県立博物館など、現代の建築でも多く利用されています。
材料:コンクリートとブロック
沖縄を訪れると、公共施設や商業ビルだけではなく、戸建ての住宅も、コンクリートのものが多いことに気づかれることと思います。
沖縄は太平洋戦争末期の沖縄戦で甚大な被害を受け、ほとんどの建物が失われてしまいました。
戦前から残る建物は非常に数が少なく、現在、私たちが目にする建物は、ほぼ戦後に建てられたものといえます。
戦後のアメリカによる統治時代、基地建設のために米軍が持ち込んだ、コンクリートとブロックによる工法が民間にも普及し、さらに沖縄特有の台風やシロアリへの対策もあり、住宅のコンクリート化が進んだようです。
(ちなみに沖縄ではシロアリの被害が大きく、シロアリが家を食べて建物を揺らす、といった話を聞いたことがあります。)
このような中、沖縄で生まれたのが、コンクリートブロックの穴にデザイン的要素を取り入れた「花ブロック」と呼ばれるものです。
花ブロックには丸や四角などの幾何学的なパターンの他、波や植物紋様をモチーフにしたものなど、さまざまなデザインのものがあり、沖縄の建物を構成するのに不可欠な建築資材となっています。
意匠・デザイン
沖縄はかつて「琉球王国」(1429~1879年)と呼ばれ、中国、日本、朝鮮、東南アジア諸国との交易で栄えた独立国でした。特に中国、日本の影響が大きく、建物のデザインも中国、日本の意匠を取り入れたものが多く見られます。意匠以外でも、中国の風水思想が、建物の配置などに影響を及ぼしている事例が見られます。
例えば、2019年に焼失した首里城正殿は、中国の宮殿建築にならって石の基壇と高欄があり、正面に日本建築に特有の唐破風を持ち、さらに唐破風に琉球の装飾が施された建物でした。
また、戦後27年間に及ぶアメリカ統治時代の建物、フラットな屋根を持つコンクリートの「外人住宅」や、レストラン、ショッピングセンターなどアメリカ的なデザインが今も残り、沖縄の街の景観をより多様なものにしています。
参考文献
- 「首里城ハンドブック」 首里城研究グループ 首里城公園友の会
- 「沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶」 岡本尚文、普久原朝充 トゥーヴァージンズ