こんにちは、Akiです。
建築好き通訳ガイドの視点から、建物の魅力について紹介しています。
今回は「横須賀美術館」です。
この横須賀美術館は、三浦半島の西端で幕末のペリー来航の地として名高い浦賀にあります。
公共交通機関でのアクセスだと、電車とバスを乗り継いで行くのに時間がかかるので、なかなか足が向きませんでしたが、先日ようやくはじめて訪れることができました。
京浜急行本線の終点「浦賀」駅で下車。そこから観音崎行きの京急バスに乗り、終点の「観音崎」バス停に向かいました。(約15分)
「観音崎」バス停から海沿いの道を5分ほど歩くと、横須賀美術館に着きます。
横須賀美術館 – Yokosuka Museum of Art
横須賀美術館は、横須賀市の市制100周年を記念して、2007年に開館しました。
神奈川県立観音崎公園の緑に囲まれ、前面には海が広がる、すばらしいロケーションにあります。
海の向こうには対岸の千葉・富津の風景がとても近く感じられ、東京湾を行き交う多くの船を間近に見ることができます。
設計は建築家・山本理顕(やまもとりけん)氏。「景観と建物とを一体化させたい」というコンセプトのもと、建物の大部分は地下に埋込まれ、高さを抑えているために、周囲と調和した佇まいになっています。
この建物のボリュームを地下に埋める手法は、上野の東京都美術館、そして直島の地中美術館を想起させます。
ぱっと見た感じ、白く透明感のある、金沢の21世紀美術館や、同じ海辺の美術館である、葉山の神奈川県立近代美術館にも似た印象の建物です。
近くで見ると、透明なガラス壁を通して、内側にさらに建物がある、二重構造になっていることがわかります。この構造は、自然光を取り込むとともに、海の塩害から建物や収蔵品を守るためということです。
中に入ると、エントランスホールへのアプローチが、地下の展示室をまたいだ橋のようになっていて、いきなり気分が上がります。
館内には、外観からは想像できないくらいの広い空間が広がっています。
天井や壁には丸い窓が不規則に配され、自然光が降り注ぐとともに、切り取られた外部の景色も見ることができます。閉ざされた空間ではなく、外部とつながった開放的な空間を感じることができます。
ホールで目を引くのが螺旋階段。上ると2階の展示スペースがありました。そこには椅子が並べられており、イベント時の観客席としても利用されるようです。
螺旋階段をさらに上ると屋上に出ます。屋上は正面に海を見渡せる広々とした広場になっています。床は自然光を建物に取り込むために半透明のガラスのところもあり、手すりのカーブも美しくデザインされています。
建物後背の公園とも「山の広場」を通じて一体的につながっており、散策を楽しむことができます。
展示室は地上階と地下階に設けられています。
訪問したときに地上階では、企画展「ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ」が開催されていて、ホールにも展示やペイントがありました。
ミロコマチコさんは絵本や、書籍・CDの装画で、おなじみの方が多いと思います。
現在は奄美大島を拠点にされているとのことで、奄美の濃厚な自然に影響を受けたと思われる近作が印象的でした。
なお、地下の展示室は収蔵品を中心とした展示に使用されています。
ピクトグラム「よこすかくん」
館内にはピクトグラム「よこすかくん」の案内が随所に配置されています。
デザインは、世界的に有名なグラフィックデザイナー・廣村正彰(ひろむらまさあき)氏。グッズにも使われており、横須賀美術館のマスコットとなっています。
とてもいいデザインで目を引かれました。全てを写真に撮りたいと思ったくらいです。
レストラン「横須賀アクアマーレ」
館内のレストランは東京 南青山の名店、「リストランテ アクアパッツァ」の日高良実シェフが総料理長を務める「横須賀アクアマーレ」。
三浦半島の旬の食材を使った、ピザ・パスタなどのイタリアン料理を、前面に広がる広場と海の景色を見ながら楽しむことができます。
海の広場
美術館の前面には芝生の「海の広場」が広がっています。イベントスペースとしても利用されるとのことです。
河津桜がちょうど咲いていて目を楽しませてくれました。
ちょっと気づきにくいのですが、広場の横に目を引く通路があります。
これは日本の戦後を代表する彫刻家・若林奮(わかばやしいさむ)氏により寄贈・設置された彫刻作品「Valleys(Second Stage)」。
この作品は、美術館の絵葉書の写真にも使われていました。
見逃さないようにしたいですね。
まとめ
三浦半島の美しい自然と一体化した横須賀美術館は、期待以上にすばらしい施設でした。
美術作品の展示だけではなく、建築の空間、公園の散策、そして食事と、時間をかけて楽しみたい場所です。