こんにちは、Akiです。
建築好き通訳ガイドの視点から、建物の魅力について紹介しています。
建物をよく見ていると、ときどき「これはどういう意味なんだろう?」というものが目に入ることがあるかと思います。
今回は、建物に刻まれた暗号のような、数字に注目する第2回です。
AD MMXII ?
「東京駅丸の内駅舎」は、明治の建築界の巨頭・辰野金吾の設計により大正年3(1914)年に竣工した、日本の赤レンガ建築の最高到達点といわれる建物です。2003年には、国の重要文化財に指定されています。
関東大震災でも、ビクともしないほど丈夫な建物でしたが、第二次大戦の東京大空襲で、3階以上に大きな被害を受けました。
戦後応急的に2階建てに復旧・改築されたまま、60余年が経過した後、2007年から2012年まで5年におよぶ復元・修復が行われました。日本でもっとも有名な建築のひとつです。
東京駅丸の内駅舎の両端ドーム内に注目してみましょう。写真は丸の内南口(上の全景写真では右)のドーム内です。
美しく復元された3階を支える柱頭部分に「AD MMXII」という記号が刻まれています。どのような意味でしょうか?
ADという文字があるので、記号の意味はわかりやすいかもしれませんね。ADは西暦の紀元年を意味します。
続くローマ字 MMXIIは数字を意味し、M(1000)が2つ、X(10)が1つ、そしてI(1)が2つなので、
M(1000) + M(1000) + X(10) + I(1) + I(1) = 2012
つまり西暦2012年ということです。
これは、東京駅の復元工事の際、「この部分は新しくデザインしました」ということを示すために、工事が行われた西暦2012年を表す「AD MMXII」が刻印されたものです。
柱のデザインはもともと銀色ではなく、薄緑色だった可能性が高いそうです。
東京駅丸の内駅舎には、この他にもさまざまな意匠が見られ、トリビア的な意味を持っています。それらを見つけるのも建築鑑賞の楽しみの一つですね。ご興味のある方は、以下の記事をご参照ください。
MCMXXVII A.D.?
東京駅は誰もが知っているような有名建築ですが、次の建物はそれほどではないかもしれません。
横浜の日本大通りにある「旧日本綿花横浜支店事務所棟」という建物です。古典主義様式のデザインで有名な建築家の渡辺節が手がけた、昭和3(1928)年竣工の建物です。
当時流行した、スクラッチタイルの外壁が目をひく、横浜らしい建物です。
現在は、横浜DeNAベイスターズが運営する複合施設「 ザ・ベイス 」として、横浜スタジアムの目の前という立地を活かした、カフェやショップが人気の建物です。
この建物の基礎の部分、上の写真では、手前の交差点に近い建物の角にある礎石にも、謎めいた記号が刻まれています。
「MCMXXVII A.D.」と読めます。どういう意味でしょうか?
そうですね。「A.D.」とあるので、これも西暦年号で、MCMXXVIIはローマ数字です。
最初のMは東京駅と同様1000ですが、次にC、そしてMが続くので、意味が読み解きにくいかもしれません。
ローマ数字のCは100ですが、その右のMとセットになっています。
ローマ数字では、大きい数の左側に小さい数がある場合は、それを引き算しますので、CMは M(1000) - C(100) = 900となります。
残りのXXVIIは、もうおわかりかと思いますが、Xは10、Vは5、Iは1ですね。
以上を総合すると、
M(1000) + CM(900) + X(10) + X(10) + V(5) + I(1) + I(1) = 1927
つまり西暦1927年となります。建物の定礎年ということでしょうね。
日本に現存する近代建築の多くは、建築年が1900年代(MCM)~2000年代(MM)だと思いますので、それがわかればローマ数字での表記も、簡単に読み取ることができますね。
ちなみに1800年代は、MDCCCとなります。(Dは500)
建物に刻まれた、そのような数字を見かけた際は、立ち止まって解読してみるのも、楽しいのではないでしょうか。