こんにちは、Akiです。
私は通訳ガイド・個人事業主としての活動にITを積極的に活用しています。
その実践に基づいた具体例を紹介します。
今回は、通訳ガイドや街歩きに役立つ、デジタル地図の活用についてご紹介します。
デジタル地図というとGoogleマップがすぐに思い浮かぶことと思いますが、今回は、国土地理院の「地理院地図」の中から「デジタル標高地形図」を使った事例を解説します。
地理院地図とは
国土地理院は日本の地形図をはじめ、さまざまなデジタル地図をウェブサイトで提供しています。
地理院地図は、地形図、写真、標高、地形分類、災害情報など、国土地理院が捉えた日本の国土の様子を発信するウェブ地図です。
(国土地理院ウェブサイト)
地理院地図の大きなメリットは、利用規約に基づいた上で、提供されている地図の複製や商用利用が可能なことです。(詳細は「国土地理院コンテンツ利用規約」を参照してください。)
これは通訳ガイドにとっても、資料やウェブ、オンラインツアーなどで地図を複製・利用できるため、とても貴重な存在です。
この地理院地図の中から、「デジタル標高地形図」の活用について、以下に説明します。
デジタル標高地形図の活用
ガイドとして観光地を案内する際、「そこはどのような場所なのか」という説明に地形の観点を加えると、内容がより興味深いものになると思います。
このような場面に使えるのが、地図に標高が一目でわかるように色や陰影がつけられた「デジタル標高地形図」です。
東京のデジタル標高地形図を例に見てみましょう。この図から東京の地形は、左側(西)の標高が高く、右側(東)は標高が低い地域であることが一目でわかります。
東京には武蔵野台地と呼ばれる高台、いわゆる山の手とその後背地が西側に広がり、それをいくつかの川が削り、谷地形を形成しています。
山の手は、高地と低地が入り混じる複雑な地形で、東京の高低差のある地形も説明することができます。
この地形から、それに由来する地名、例えば坂(赤坂)、谷(渋谷、谷中)の話ができますね。
外国人観光客にも人気の皇居(江戸城)は、この武蔵野台地の東端に築かれていて、平地にありながら高低差を利用した要害であるということを、現地で堀との高低差を見ながら説明することができます。
古地図(絵図)の活用
現代のデジタル地図に古地図(絵図)を組み合わせると、さらに説明の幅が広がります。
例えば、「武州豊嶋郡江戸庄図(ぶしゅうとしまごおりえどのしょうず)」を見てみましょう。
現在知られている限りで最も古く、内容が正確だと言われている江戸図で、江戸時代初期の様子を知ることができます。
この絵図は西が上になっています。江戸城の周りを武家屋敷が取り囲み、下半分に描かれた銀座から日本橋にかけては、半島のようになっており、すぐ近くは海だったことがわかります。
そのあたりをデジタル標高地形図で見てみると、平地の中でも少し色が違う(濃い緑色)標高の高い場所であり、この部分に半島(「江戸前島(えどまえじま)」と呼ばれる)の名残を見ることができます。
また、現在の丸の内は大きなビルの立ち並ぶビジネス街ですが、江戸時代は大名などの武家屋敷があった場所で、広い区画が現代の街の形成にも影響していることが読み取れます。
一方、銀座から日本橋は町人地だったため、絵図には大まかな区画しか描かれていません。現代の比較的小さい建物が密集する銀座から日本橋の景観が、江戸時代の町割りの影響を受けていることを説明することができます。
おわりに
デジタル標高地形図は、日本のさまざまな地域のものが作成・公開されています。
事前に案内する場所の地形について調べておき、現場では必要に応じて地形図を見せながら説明することができます。
デジタル標高地形図をあらかじめダウンロードし、資料化した上でiPadなどのタブレットでお見せするのも有効な方法です。
具体的な方法は以下の記事をご参照ください。
地形の観点からの説明は少しマニアックかもしれませんが、興味深い視点を与えてくれるものと思います。